ますいい不動産ブログ

2025/10/28 [更新:2025/12/02]

時を重ねた家に宿る価値──
築40 年のリノベーション物件を訪ねて

2018年に⾃社でリノベーションした中古物件の購⼊相談がやってきた。
その物件は築40年以上の⽊造⼀⼾建て。販売価格は6100万円。
決して安くはない価格だ。

購⼊相談に来たのは、30代前半の若いご夫婦とそのご両親。
これからお⼦様もできることを想定し、
⻑く安⼼して暮らせる中⼾建てを探しているという。

6100万円あれば、ハウスメーカーの建売新築も⼗分に購⼊できる。
それでもこの家にこだわった理由は何だったのだろうか。


坂の多い⼟地にひっそりと佇む⼀軒

このエリアは⾼低差が⼤きく、階段や坂道に囲まれた丘陵地。
駅から徒歩18分と、決して利便性に恵まれているわけではない。
40年前に⼤⼿ハウスメーカーが開発した住宅地で、
今では落ち着いた街並みが広がっている。

この物件は、その中でも⼀番⾼い場所に建っている。
裏⼿には⼩さな公園が隣接し、敷地の三⽅を公道が囲む。
どの建物とも隣接せず、⼦どもを安⼼して遊ばせられる環境。
⾵の抜けと光の通りが良く、⽴地そのものに開放感がある。


住まいに宿る「⼈の⼿の跡」

この家のリノベーションには、約2000万円がかけられている。
古い柱の取り替えやサッシの交換などの構造的な改修に加え、
デザインにも売主のこだわりが随所に⾒える。

キッチンは造作で、⽊の節や表情をあえて残した素材を使い、
サーフィンが趣味の売主のために、
サーフボードを⽴てて収納できる棚が設けられている。そして何より⽬を引いたのは男性のロマン、ハーレーが半屋外のガレージに佇み、中からはガラス張りでその姿が⾒えるようになっている。

壁は売主⾃⾝によるセルフビルドで漆喰が塗られており、
調湿・抗菌に優れ、扉を開けると家中の空気が透き通るように感じられる。
⽊材の模様や素材の⼒を⽣かした空間は、派⼿さではなく静かな存在感を放つ。
正直、かっこいい。欲しいと思える家だ。


不動産の価値は、数字だけでは決まらない

この物件を通して改めて感じたのは、
「エリアの平均価格」や「築年数」では測れない価値があるということ。

同じ⼟地でも、その背景や暮らし⽅、
そして建物に込められた⼈の思いによって、価値は⼤きく変わる。
築40年の家が、増改築とリノベーションを経て、
また次の世代へと受け継がれようとしている。
そのことが、ただ嬉しかった。

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